無期転換ルールとは| 企業の対応は? 弁護士が解説

目次

第1 無期転換ルール

1 無期転換ルールとは

無期転換ルールとは、平成24年8月に成立した「改正労働契約法」(平成25年4月1日施行)により、対応が必要になった雇用に関するルールのことです。
有期労働契約が同一の使用者との間で通算5年を超えて更新された場合は、有期契約労働者(契約社員やアルバイトなどの名称を問わず、雇用期間が定められた労働者)の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。
無期転換の申込みがあった場合、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日から無期労働契約となります。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

2 無期転換ルールへの対応が必要な理由

今日、有期契約労働者の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を更新している実態にあります。つまり、多くの会社にとって、有期契約労働者が戦力として定着しているといえます。特に長期間雇用されている有期契約労働者は、例えば仮に「1年契約」で働いていたとしても、実質的には会社の事業運営に不可欠で恒常的な労働力であることが多く、ほぼ毎年「自動的に」更新を繰り返しているだけといえます。

このような労働者を期間の定めのない労働契約の労働者として位置付け直すことは、むしろ自然なことであり、実態と形式を合わせる措置といえます。このように、有期契約労働者の長期勤務化が進む中で、労働契約法に定められた「無期転換ルール」は、事業主にとっては雇用を安定させ、有期契約労働者にとっては雇止めの不安を解消することによって、お互いが安心して働くことを可能にするための制度です。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

3 無期転換ルールに対応する必要のある会社

以下のフローチャートをご参照ください。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

4 無期転換ルールの対象となる労働者

無期転換ルールへの対応が求められるのは、有期契約労働者です。一般に「契約社員」「パート」などとよばれる労働者のほか、会社が独自に位置付けている雇用形態(例えば、準社員、パートナー社員、メイト社員など)についても、契約期間に定めのある場合は、その名称にかかわらず、すべて「無期転換ルール」の対象となります。
なお、「派遣社員」の場合は、派遣元の会社に無期転換ルールへの対応が求められます。

5 無期転換申込権が発生する条件

雇用している有期契約労働者に無期労働契約への転換を申し込む権利(これを「無期転換申込権」といいます。)が発生した契約期間中に、その雇用している有期契約労働者から無期転換の申込みがあった場合は、使用者は申込みを承諾したものとみなされ、その時点で無期労働契約が成立します。
次の3要件がそろったとき、無期転換申込権が発生します。

① 有期労働契約の通算期間が5年を超えている
同一の使用者※との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(これを「通算契約期間」といいます。)が、5年を超えていることが要件となります。
 ※「同一の使用者」とは、労働契約の締結主体(企業)を単位として定めるものであり、例えばA工場からB工場に勤務場所を変更する等、事業場を変えても労働契約の締結主体に変更がなければ雇用契約を継続しているとみなされます。

契約期間が5年を経過していなくても、例えば、契約期間が3年の有期労働契約を更新した場合は、通算契約期間が6年になるため、4年目にはすでに無期転換申込権が発生していることになります。

同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない期間、すなわち「無契約期間」が、一定の長さ※以
上にわたる場合、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます(図2、図3参照)。
 ※無契約期間以前の通算契約期間が1年以上の場合、無契約期間が6ヶ月以上であれば、当該無契約期間以前の契約期間は、通算契約期間に算入されません(クーリングされます。)。

 ※無契約期間以前の通算契約期間が1年に満たない場合、下図1の右欄に掲げる期間に該当するときは無契約期間より前の有期労働契約は通算契約期間に算入されません(クーリングされます。)。すなわち、「無契約期間がそれ以前の通算契約期間÷2」(ただし端数は1ケ月単位で切上げ)以上であれば、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。

通算契約期間は、改正労働契約法の施行日である平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約からカウントします。
それ以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間の算定の対象となりません。

② 契約の更新回数が1回以上であること
契約更新等により、同一の使用者との間で2以上の有期労働契約を締結したことが無期転換申込権発生の要件となります。

③ 現時点で同一の使用者との間で契約していること
通算5年を超えて契約をしてきた使用者との間で、現在、有期労働契約を締結していることが要件となります。
なお、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、就業実態がそれまでと変わらないにもかかわらず、派遣形態や請負形態を偽装して労働契約の締結主体を形式的に他の使用者に切り替えた場合、同一の使用者の要件を満たしているものと解釈されます。また、派遣先が、直接雇用していた労働者の離職後1年以内にその労働者を派遣社員として受け入れることは、労働者派遣法第40条の9で原則禁止されている点に留意してください。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

6 無期転換ルールの特例

専門的知識等を有する有期雇用労働者に関する特別措置法により、高度な専門的知識を有する有期契約労働者の特例がございます。

・特例を受けるための要件
ア. 高収入で、専門的知識等を有する有期契約労働者であること。
イ. 当該専門的知識等を必要とする業務に就いていること。ただし、5年を超える一定の期間内に完了することが予定されているもの(以下「プロジェクト」といいます。)に限ります。
ウ. 適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けること。

・特例の効果
当該業務に就いている期間に限り、無期転換申込権が発生しません。ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10年です。

また、専門的知識等を有する有期雇用労働者に関する特別措置法により、定年後引き続いて雇用される有期労働者の特例がございます。

・特例を受けるための要件
ア. 定年に達した後、引き続き当該事業主に雇用されている有期契約労働者であること。
イ. 適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けること。

・特例の効果
定年後引き続き雇用されている期間、無期転換申込権が発生しません。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

7 有期雇用特別措置法の適用の流れ

① 無期転換ルールの特例の適用を希望する事業主は、特例の対象労働者に関して、能力が有効に発揮されるような雇用管理に関する措置についての計画を作成します。
② 事業主は、作成した計画を、本社・本店を管轄する都道府県労働局に提出します。
※本社・本店を管轄する労働基準監督署経由で提出することもできます。
③ 都道府県労働局は、事業主から申請された計画が適切であれば、認定を行います。
④ 認定を受けた事業主に雇用される特例の対象労働者(高度専門職と継続雇用の高齢者)について、無期転換ルールに関する特例が適用されます。
※有期労働契約の締結・更新の際に、無期転換ルールに関する特例が適用されていることを対象労働者に明示する必要があります。

特例の対象者と有期労働契約を締結する場合には、相手方が特例の対象者となる旨等を、原則として書面により明示し、その内容を説明すること等により、相手方がその旨を予め適切に知ることができるようにするなど、適切な運用が必要です。
上記以外にも、大学等及び研究開発法人等の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間を5年から10年とする特例があります。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

 

第2 【Q&A】よくある質問 無期転換ルール

1 無期労働契約に転換される労働者のために、あらかじめ就業規則等を整備する必要はありますか。また、整備するに当たって留意すべきことはありますか。

無期転換ルールによって、契約期間は有期から無期に転換されますが、無期転換後の給与などの労働条件は、就業規則等で別段の定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一の労働条件となります。
したがって、無期労働契約に転換された労働者に対して、どのような労働条件を適用するかを検討した上で、別段の定めをする場合には、適用する就業規則にその旨を規定する必要があります。ただし、無期転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後の労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではありません。
また、特に定年など、有期契約労働者には通常定められていない労働条件を適用する必要がある場合には、適切に設定の上、あらかじめ明確化しておく必要があります。

2 無期転換の申込みについて、原則として有期労働契約の期間が満了する日まで権利が行使できることを労使で確認した上で、合理的な長さの申込期間を設定すること(例えば、就業規則で契約期間満了の 1 か月前までと定めること等)は可能でしょうか。

後任者の採用など企業の人事労務管理上の必要性から、無期転換の申込みの期限について、就業規則等で「無期転換の申込みは契約満了日の1か月前までに行うこと」などと定めること自体は禁止されていません。

ただし、法律上は、「契約期間が満了する日までの間に」無期転換の申込みをしたときは、無期労働契約が成立することとされていることから、就業規則等で上記のような申込期限を定めた場合であっても、労働者がその期限までにその真意に基づいて無期転換申込権を行使しない旨意思表示した場合は別として、契約期間の満了日までに労働者が無期転換の申込みをした場合については、その申込みが有効とされる可能性もあると考えられます。労働者が無期転換申込権を行使しない旨意思表示した場合であっても、その意思表示が無期転換ルールの意味や本来自由に権利行使できることを理解せずになされた場合は、労働者の真意に基づくものとはいえないとして、無効となる可能性もあると考えられます。

なお、就業規則の制定・変更により申込期限を定める場合は、その就業規則を労働者に周知させ、かつ、その定めの内容が合理的である必要があることに留意が必要です(労働契約法第7条、9条、10条参照)。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

3 通算契約期間が 5 年を超える有期労働契約を締結する際には、無期転換の申込みができることを使用者は説明しなければならないのでしょうか。

無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新時に、使用者は、「無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)」を労働者に対して書面で明示することが必要です(労働基準法施行規則第5条第5項・第6項)。
初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新の都度、明示が必要になります。

【記載例】本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(○年○月○日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

なお、有期特措法(Q&A 7参照)による特例の適用に当たっては、紛争防止の観点から、事業主は、労働契約の締結・更新時に、特例の対象となる労働者に対して、それぞれ無期転換申込権が発生しない期間であることを書面で明示することが必要ですので、ご留意ください(労働基準法第15条及び特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第5条の特例を定める省令)。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

4 無期転換申込権が発生する前に、有期契約労働者を雇止めすることはできますか。

使用者が有期労働契約の更新を拒否した場合(雇止めをした場合)、労働契約法第19条に定める雇止め法理により、一定の場合には当該雇止めが無効となる場合があります。また、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前の雇止め等を行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という労働契約法第18条の趣旨に照らして望ましいものではありません。有期労働契約の満了前に使用者側が更新年限や更新回数の上限などを一方的に定めたとしても、雇止めをすることは許されない場合もありますので、慎重な対応が必要です。

なお、有期労働契約の締結時及び契約更新時に、更新上限の有無とその内容を明示することが必要です(労働基準法施行規則第5条第1項第1号の2)。この更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前に)説明することが必要です(有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準第1条)。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

5 有期契約労働者から無期転換の申込みがありましたが、必ず無期転換しなければならないのでしょうか。会社としてこれを拒否することは可能でしょうか。

通算契約期間が5年を超える有期契約労働者が、現在締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、無期転換の申込みをしたときは、使用者はこの申込みを承諾したものとみなされ、申込みの時点で、申込時の有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日を始期とする無期労働契約が成立します(労働契約法第18条第1項)。
したがって、会社は無期転換を拒否することはできません。

6 無期転換の申込みをした後、実際に無期転換される前までに、会社は雇止めや解雇ができるのでしょうか。

会社は無期転換を拒否することはできません。会社が無期転換を認めず、現在締結している有期労働契約の満了をもって有期労働契約関係を終了させようとした(雇止めしようとした)としても、その雇止めをもって当然に無期転換申込権の行使により成立した始期付無期労働契約を解約(解雇)することにはならず、無期労働契約の関係は終了していないと考えられます。

また、有期労働契約だけでなく始期付無期労働契約の関係も終了させようと解約(解雇)を申し入れたとしても、この解雇が「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」場合には、権利濫用に該当するものとして無効となるとされています(労働契約法第16条)。

さらに、有期労働契約の解約(解雇)が有期労働契約の期間中に行われた場合には、やむを得ない事由がない限り認められず、無効と判断される可能性は無期労働契約の解雇より高いと考えられます(労働契約法第17条)。なお、労働者が無期転換の申込みをしたにもかかわらず、無期転換をさせないために労働者を雇止め・解雇することは望ましいとは言えず、仮に裁判になれば無効と判断される可能性は高いと考えられます。

7 60 歳定年後に有期労働契約で継続雇用している労働者を、65 歳(通算5年)を超えて契約更新した場合、この労働者は無期転換の申込みができるのでしょうか。

定年後に引き続き雇用している有期契約労働者についても、同様に無期転換ルールが適用されます。
ただし、適切な雇用管理に関する計画を作成し都道府県労働局長の認定を受けた場合には、特例として、その事業主に定年後引き続き雇用される期間は、無期転換申込権が発生しないという制度(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(平成26年法律第137号))もあります。

なお、有期契約労働者が、既に企業等において定めている定年の年齢を超えた後に無期転換申込権を行使した場合(例:60歳定年制の企業において、62歳に通算5年を超える有期契約労働者が無期転換申込権を行使した場合など)についても、同様に無期転換ルールが適用されます。この場合、上記定年が、定年の年齢を超えた後に無期転換した労働者に当然に適用されるわけではないことに注意が必要です。

8 A 社を定年退職後、有期労働契約で B 社(A 社のグループ会社ではない)に入社し、そののちに無期転換した者など、有期特措法(Q7 参照)の特例の対象とならない高年齢者について、B 社が定年を定めることは可能でしょうか。

労働契約において、労働者が一定の年齢に達したことを理由として労働契約を終了させる旨(定年)を定めることは可能です。

もっとも、就業規則における定年の定めについては、労働契約法第7条、第9条及び第10条に定められている就業規則法理の適用を受けるものであることに留意が必要です(※)。無期転換ルールの趣旨も踏まえ、労使でよく話し合って十分な理解を得た上で、適切な労働条件の設定(定年の定め)をする必要があります。

(※)例えば65歳で無期転換した者の定年を66歳とするような場合など、無期労働契約に転換するという無期転換ルールの趣旨を没却させるような目的で定年の定めをすることは、法の趣旨に照らして望ましいものとは言えません。同様に、無期転換ルールの趣旨を没却させるような目的で、無期転換時の年齢に応じて定年が無期転換後すぐに到来するように段階的な定年の定めを設定すること(例:無期転換申込権行使時の年齢が66歳の場合は定年は67歳、行使時の年齢が67歳の場合は定年は68歳とするような場合など)も法の趣旨に照らして望ましいものとは言えません。

(引用元:無期転換ルール ハンドブック~無期転換ルールの円滑な運用のために~ 厚生労働省)

 

第3 無期転換ルールの裁判例等

1 無期転換前の雇止め等

1 無期転換申込権が発生する直前に合理的な理由のない雇止め

契約更新について合理的な期待が生じている状況で、無期転換申込権の発生を回避するために雇止めを行った場合、特段の事情がないときは、当該雇止めに客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断され得ます。

公益財団法人グリーントラストうつのみや事件について、裁判例の詳細は以下になります。

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

2 無期転換申込権発生前に新たに(一方的に)更新上限を設定して上限を理由に雇止め

契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が一方的に更新上限を設定しても合理的期待が失われることにはならず、当該上限到達のみを理由に雇止めが行われても、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断され得ます。
※1 労働基準法第15条及び労働基準法施行規則5条により、更新上限の有無とその内容は、契約締結時及び契約更新のタイミングごとに書面の交付による明示が必要です。なお、労働者が希望した場合は、書面の交付によらず、ファクシミリの送信、電子メール等の送信により明示することも可能です。
※2 有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準1条により、使用者は有期労働契約の変更又は更新に際して、更新上限を定める場合には、その理由を説明することが求められます。

個別契約による場合
使用者が新たに設定した更新上限のある雇用契約書に労働者が署名押印したことをもって直ちに労働契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当でなく、労働者に労働契約を終了させる旨の明確な意思があると認められない場合は、労働契約が合意により終了したとはいえず、更新上限の記載は雇止めの予告と判断され得ます。

就業規則による場合
契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が一方的に就業規則の変更により更新上限を設定した場合には、就業規則の変更の前の段階で契約更新の合理的期待が生じており変更をもって合理的期待が消滅したとは認められないと判断され得ます。

博報堂事件

地方独立行政法人山口県立病院機構事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

3 当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止め

当初の契約締結時から更新年限や更新回数の上限を設けることは、それ自体としては直ちに違法になるものではありませんが、雇用継続を期待させるような使用者側の言動がある等、雇用継続への期待が生じている場合には、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性により判断されることとなります。

日本通運(川崎)事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

4 再雇用を約束した上で雇止めをし、クーリング期間経過後に再雇用

クーリング期間経過後に再雇用することを約束して雇止めを行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という労働契約法18条の趣旨に照らして望ましいものではありません。

5 無期転換申込権が生じる前に派遣や請負を偽装して形式的に他の使用者に切替え

無期転換申込権の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、労働契約法18条の趣旨を潜脱するものとして、通算契約期間の計算上「同一の使用者」と解されます。

6 無期転換後の労働条件について(一方的に)不合理な「別段の定め」をすることによる無期転換申込みの抑制

労働契約法18条1項の「別段の定め」をする場合においても、労働契約法7条~10条が適用されるものであり、一方的に不合理な定めをすることはできません。

就業規則により「別段の定め」をする場合は、特段の事情もなく、無期転換権の行使を抑制することのみを目的として一方的に不利益な労働条件の 「別段の定め」を行った場合、労働条件設定・変更の合理性が認められない可能性があります。

個別合意により「別段の定め」をする場合は、労働契約法8条により、無期転換申込みの際に提示された労働条件に労働者が合意しない限り「別段の定め」は成立せず、転換前の有期労働契約と(契約期間以外は)同一の労働条件で無期労働契約が成立することとなります。
労働条件の不利益変更について個別合意が認定されるには、判例を踏まえると、労働者が自由な意思に基づ
いて同意したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する必要があります。

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

7 無期転換申込みの拒否

無期転換申し込みの成立

労働者が無期転換申込権を行使したことにより、使用者の承諾があったとみなされます(労働契約法18条1項)。現在の契約期間の満了日の翌日から開始する無期労働契約が成立しており、使用者が現実に申込みを拒否する行動に出ても、当該無期労働契約の成立を妨げることにはなりません。


無期転換の拒否と解雇

使用者による無期転換申込みの拒否が、成立した無期労働契約の解約(解雇)の趣旨と解される場合には、当該解約(解雇)について、客観的合理性・社会的相当性を欠けば、権利濫用に該当するものとして無効と解され得ます。

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

8 無期転換申込権の事前放棄の強要

無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等あらかじめ無期転換申込権を放棄させることは、労働契約法18条の趣旨を没却するものであり、公序良俗に反し、無効と解されます。

9 細切れな定年を設定し、無期転換後、数年で定年退職

無期転換後すぐに定年が到来するように段階的な定年の定めをすることは、労働契約法18条の趣旨に照らして望ましくありません。

2 無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い

無期転換の申込みをしたことその他無期転換の申込みに関する行為を行ったことを理由として、無期転換申込権の行使を抑制し、無期転換申込権を保障した趣旨を実質的に失わせることとなる解雇その他不利益な取扱いをすることは許されず、そうした解雇や不利益な取扱いは、その内容に応じて労働契約法、民法の一般条項、判例法理等による司法的救済の対象となります。

無期労働契約への転換に当たり、労働契約法18条1項の「別段の定め」をすることにより、待遇の引上げと併せて、相応な職務の範囲や責任の程度などの変更を行うことは、労働者のキャリアアップにもつながり、一般的には不利益取扱いとは解されませんが、職務の内容などが変更されないにも関わらず、無期転換後の労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではありません。

 

第4 多様な正社員

1 労働条件の変更

労働条件変更に対する労働者の同意の有無については、その同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から判断されるべきです。

山梨県民信用組合事件


また、個別合意による労働条件の変更にあたっては、労働者が変更内容の全体及び詳細について適切に特定・把握し、また、記憶に止めることができるように措置を講ずる必要があるとされたケースがあります。上記の考え方に加えて、「合意された内容をできる限り書面化しておくことが望ましい」という考えが示されたケースもあります。

東武スポーツ(宮の森カントリー俱楽部・労働条件変更)事件

技術翻訳事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

2 勤務地、職務、勤務時間についての限定合意

1 限定合意と配転命令

限定合意が認められる場合、当該限定合意に反する配転命令に関しては、労働者の同意がない限り効力を有しないものとされます。

滋賀県社会福祉協議会事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

2 限定合意と労働者の合意

限定合意を変更するための労働者の同意は、労働者の任意(自由意思)によるものであることが必要となります。

西日本鉄道事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

3 その他(限定合意が認められない場合)

限定合意が認められない場合でも、特定の業務に従事することの期待が法的保護に値すると判断されたケースもあります。

安藤運輸事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

3 整理解雇

1 勤務地や職務限定と整理解雇の考え方

整理解雇について、勤務地や職務の限定が明確化されていれば直ちに解雇が有効となるわけではなく、整理解雇法理(4要件・4要素)を否定する裁判例はありません。

学校法人奈良学園事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

2 解雇の有効性の判断の傾向

解雇の有効性については、人事権の行使状況や労働者の期待などに応じて判断される傾向にあります。

ワキタ(本訴)事件

また、転勤や配置転換が可能な範囲に応じて、解雇回避努力や被解雇者選定の妥当性等の判断が異なる傾向にあります。

学校法人村上学園事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

3 勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定と整理解雇法理の判断の傾向

勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定については、整理解雇法理の判断に与える影響は小さく、解雇回避努力として配置転換を求められることが多い傾向が見られます。

<勤務地限定>シンガポール・デベロップメント銀行(本訴)事件

<職務限定>全日本海員組合事件

また、高度な専門性を伴う職務限定や他の職務とは内容や処遇が明確に区別できる職務限定については、整理解雇法理の判断に一定の影響があり、配置転換ではなく退職金の上乗せや再就職支援でも解雇回避努力を行ったと認められる場合があります。

フェイス事件

使用者には、転勤や配置転換の打診を可能な範囲で行うとともに、それが難しい場合には代替可能な方策を講じることが、紛争を未然に防止するために求められます。また、そうした対応は結果的に雇用の安定を通じた長期的な生産性の向上などにつながると考えられます。

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

4 能力不足解雇

能力不足解雇について、能力不足を理由に直ちに解雇することは認められるわけではなく、高度な専門性を伴わない職務限定では、改善の機会を与えるための警告に加え、教育訓練、配置転換、降格等が必要とされる傾向がみられます。

ブルームバーグLP事件

高度な専門性を伴う職務限定では、警告は必要とされるが、教育訓練、配置転換、降格等が必要とされない場合もみられます。

ドイツ証券事件

使用者は、改善の機会を与えるために警告を行うとともに、可能な範囲で教育訓練、配置転換、降格等を行うことが紛争の未然防止に資することとなります。

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

5 その他

労働条件の変更に応じないことを理由とする解雇(いわゆる変更解約告知)の効力の判断基準については、過去の裁判例において、 ①の解雇権濫用法理による判断枠組みが示されています。なお、②のように異なる判断枠組みを採用した例もみられます。


① 解雇の意思表示がなされることにより労働者が解雇と労働条件変更の二者択一を迫られることから、解雇権濫用法理(変更解約告知については、労働者側に帰責事由がないことが多いために、整理解雇法理が特に問題になる)によってその効力を判断すべき。
② 労働条件の変更手段としての性格に即して、解雇権濫用法理とは別個の判断枠組みを用いるべきとして、以下3つの要件を判断基準とすべき。
・ 労働条件変更の必要性
・ 変更の必要性が労働者の不利益を上回り、労働条件の変更を伴う新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することがやむを得ないこと
・ 解雇回避努力が尽くされていること

①の裁判例 大阪労働衛生センター第一病院事件

②の裁判例 スカンジナビア航空事件

(引用元:無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例 厚生労働省)

 

第5 動画解説

動画解説に興味がある方は、こちらをご視聴ください。

第7 補足:参考情報

1、今後、新しい情報が入れば、アップデートしたいと思っています。

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