日本版DBS(こども性暴力防止法)への対応【弁護士解説】

日本版DBS(こども性暴力防止法)への対応は、単なる事務手続きではありません。性犯罪歴という機微情報を取り扱うことは、一歩間違えれば企業がプライバシー侵害で訴えられる重大な法的リスクを孕んでいます。本記事では、弁護士の視点から、認定取得のポイントと労務管理上の留意点を解説します。

目次

第1 こども性暴力防止法とは

教育・保育などのこどもに接する場での、こどもへの性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守るため、2024年6月「こども性暴力防止法」が成立しました。この法律で定められている取組は、2026年12月25日に施行されます。

※法律の正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」といいます。
※ニュースなどでは「日本版DBS」と呼ばれることもあります。

第2 こども性暴力防止法の概要

1 こども性暴力防止法の制度趣旨

児童等に教育・保育等を提供する事業者に対し、従事者による児童対象性暴力等を防止する措置を講じること等を義務付けます。

2 こども性暴力防止法の制度対象

事業者が行う各事業・業務が、児童等との関係で、①支配性、②継続性、③閉鎖性を有するか否かの観点から、対象事業・業務が規定されます。

対象事業者は、
学校設置者等(学校、児童福祉施設等、本法に定める措置を義務として実施すべき事業者)
民間教育保育等事業者(学習塾、放課後児童クラブ、認可外保育施設等、国の認定を受けて本法に定める措置を実施する事業者)
を指します。

対象業務は、
学校設置者等における教員等(教諭、保育士等)
民間教育保育等事業者における教育保育等従事者(塾講師、放課後児童支援員等)
を指します。

3 こども性暴力防止法の対象事業者に求められる措置等

対象事業者に求められる措置は、以下の通りです。

(1) 安全確保措置

(2) 情報管理措置
特定性犯罪前科等の情報を適正に管理するための措置を指し、具体的には、

(イ) 犯罪事実確認記録等の適正な管理
(ロ) 犯罪事実確認記録等の利用目的の制限及び第三者提供の禁止
(ハ) 犯罪事実確認書に記載情報の漏えい等の報告
(ニ) 犯罪事実確認記録等の廃棄及び消去
(ホ) 情報の秘密保持義務

をいいます。

なお、安全確保措置・情報管理措置の実施状況については、国・所轄庁が指導・監督を実施します(定期報告、報告徴収及び立入検査、命令、認定等の取消、公表等)。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第3 こども性暴力防止法の制度の対象

(1) 法律で定める性暴力防止の取組の義務がある事業者

○学校(幼稚園、小中学校、高校等)
○専修学校(高等課程)
○認定こども園
○児童相談所
○児童福祉施設
(認可保育所、児童養護施設、
障害児入所施設等)
○指定障害児通所支援事業
○乳児等通園支援事業

などが挙げられます。

(2) 国の「認定」を受けた事業者が法律で定める性暴力防止の取組を行うもの(認定は任意)

○専修学校(一般課程)・各種学校
○民間教育事業
(学習塾、スポーツクラブ等)*詳しくは(3)で後述
○放課後児童クラブ
○一時預かり事業
○病児保育事業
○認可外保育事業
○指定障害福祉サービス事業

などが挙げられます。(「認定」については第4にて後述します。)

(3) 民間教育事業とは

より幅広い事業者が認定を取得できるように、「民間教育事業」が制度対象として設定されています。

こどもに何かを教える事業であれば、事業内容は問われません。こどもの受入れ実績があり、次の要件を満たしている必要があります。
(芸能事務所やこども食堂なども、この要件を満たせば対象)

主な要件
① 修業期間要件 6ヶ月以上の期間中に2回以上同じこどもが参加できること
② 対面要件 こどもと対面で接すること
③ 場所要件 こどもの自宅以外(オフィス、カフェ等)で教えることがあること
④ 人数要件 こどもに何かを教える者が3人以上であること

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第4 こども性暴力防止法の「認定」について

事業者が、こども家庭庁に事業ごとに申請を行い、基準を満たす場合は、認定を受けることができます。認定された事業者は、こどもと接する従事者が、過去に性犯罪を犯していないかの確認などを行う必要があります。

(1) 認定の基準・必要な手続

認定には、法律で定められた性暴力を防ぐ取組や犯歴情報を適正に管理する取組を適切に実施する体制が必要です。

認定を受けるためには、オンラインでの申請が必要です。申請から認定までは約1~2か月かかる見込みです。

(2) 認定の効果

国が「認定」した事業者(学習塾、スポーツクラブなど)は、こども家庭庁のウェブサイト上で公表され、どの事業者が認定を受けているか確認できるようになります。

また、「認定事業者マーク」を広告などに使えるようになり、性暴力防止の取組をしている事業者が一目で分かるようになります。

認定事業者マークとしては「こまもろう」マークがあります。「こまもろう」マークが付けられるものの例として、

・制服
・パンフレット、募集案内、メディア広告、ウェブサイト
・名刺、電子メール
・受付、玄関ホール、看板
・求人広告

などがあげられます。
なお、認定事業者以外が認定事業者マークを、法定事業者以外が法定事業者マークを使うことは、法律等で禁止されており、違反をした場合は、罰則等があります。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第5 対象事業者に求められる性暴力を防ぐための取組について

事業者は、法律で定められた性暴力を防ぐための取組(安全確保措置)を実施する必要があります。その具体的な内容については、以下のようなものがあります。

(1) 日頃から取り組むこと

  • 事業者・業界ごとに「性暴力」や「不適切な行為」に当たる行為を決める。
  • いちはやく異変に気づくことができるような仕組みを整える(例:面談やアンケート)。
  • こどもたちが性暴力について相談しやすい仕組みを整える。
  • こどもと接する仕事に就く人たち(先生など)は性暴力を防ぐための研修を受ける。

(2) 性暴力が起こった場合に取り組むこと

  • こどもたちの人権を大切にし、心を傷つけないように調査(聴き取りなど)を行う。
  • こどもたちが安心して教育や保育を受けられるように保護・支援を行う。

(3) 性犯罪を繰り返させないために取り組むこと

  • こどもと接する仕事に就く人が、過去に性犯罪を犯していないかの確認(犯罪事実確認)を行う。
  • 過去に性犯罪を犯していた場合や、調査から性加害を行っていたことが分かった場合等には、性暴力のおそれがあるとの判断の下、こどもに接する業務に就かせない(防止措置)。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第6 「性暴力」「不適切な行為」とは 

「性暴力」には、犯罪に該当するものだけでなく、「こどもを不快にさせる性的な言動」なども含まれます。

また、教育・保育などの場において、性暴力を防止していくためには、性暴力につながる可能性がある「不適切な行為」についても、皆で注意し、防止していくことが必要です。

「性暴力」の例
○不同意性交 ○性的部位への接触 ○わいせつな言動
○児童買春 ○児童ポルノ撮影・所持 ○のぞき、盗撮

「不適切な行為」の例
○こどもとSNS上で私的なやり取りを行う
○私物スマートフォンでこどもの写真を撮影する
○休日にこどもと二人きりで会う
○不必要な身体接触(おむつの中に手を入れて排せつを確認するなど)を行う
○特定のこどもばかり、理由なく担当しようとする

→ 過度な委縮につながらないよう、現場の従事者とコミュニケーションを図り、日々の振り返りなどを通じて、「不適切な行為」の共通認識を形成することが重要です。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第7 犯罪事実確認について

(1) 犯罪事実確認とは

事業者は、こどもと接する業務の従事者について、雇入れや配置転換の際、過去の性犯罪歴の確認が必要
となります。

(2) 犯罪事実確認の対象

犯罪事実確認では、「特定性犯罪」と呼ばれる罪を犯し、

1)拘禁刑の執行が終わってから20年が経過していないもの
2)拘禁刑の執行猶予の判決が確定してから10年が経過していないもの
3)罰金刑の執行が終わってから10年が経過していないもの

が確認の対象となります。

「特定性犯罪」の例としては、

・不同意わいせつ
・児童買春
・児童ポルノ所持
・痴漢
・盗撮
・未成年淫行

などがあげられます。なお、成人に対する性犯罪を含みます。

(3) 犯罪事実確認の手続

犯歴なしの場合

①事業者からこども家庭庁に申請
②戸籍情報は、従事者本人がこども家庭庁に提出
③こども家庭庁から法務省に性犯罪前科を照会
④法務省からこども家庭庁に回答
⑤こども家庭庁から事業者に犯罪事実確認書を交付

犯歴ありの場合

①事業者からこども家庭庁に申請
②戸籍情報は、従事者本人がこども家庭庁に提出
③こども家庭庁から法務省に性犯罪前科を照会
❹法務省からこども家庭庁に回答
❺こども家庭庁から従事者本人に回答内容を事前に通知。従事者本人は、通知内容の訂正請求が可能。
❻-1 訂正請求期間中に従事者本人が内定辞退すれば、犯罪事実確認書は交付されない
 -2 訂正請求せず2週間が経過すれば、こども家庭庁から事業者に犯罪事実確認書を交付

なお、犯歴のある・なしに関わらず、犯罪事実確認に関する情報は厳重に取り扱う必要があります。
また、対象従事者が派遣労働者等である場合は、派遣元ではなく、派遣先の事業者にて犯罪事実確認を実施します。

(4) 犯罪事実確認の対象従事者

教員、保育士等、こどもと常に接する職種は一律対象となります。
事務職員、送迎バスの運転手など、業務内容によって、こどもに継続的に接する可能性がある職種は、現場判断で対象とできるように整理されています。
雇用形態の違い、雇用契約の有無などにかかわらず、短期間の労働者、ボランティアなども対象になります。

(5) 犯罪事実確認の期限

犯罪事実確認の期限については、以下のようになっています。

① 新規採用・配置転換:内定・内示等から従事開始まで
<やむを得ず間に合わない場合の特例(いとま特例)>
・ 急な欠員、人事異動等:従事開始から3か月以内に確認
・ 合併・新設、国による確認の遅れ等:従事開始から6か月以内に確認
※ 確認が済むまでは、原則こどもと1対1にさせない等の措置をとる必要があります。

② 義務事業の現職者:法施行から3年以内

③ 認定事業の現職者:認定から1年以内

④ 一度確認を受けた者:5年ごとに再確認が必要

犯罪事実確認にかかる時間については、日本国籍の場合、2週間~1か月程度、外国籍の場合、1か月~2か月程度となっています。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第8 採用にあたっての留意点

(1) 事業者が採用にあたって行うべきこと

内定者に犯罪事実確認を行い、性犯罪歴があることが分かった場合、性暴力のおそれがあるとの判断の下、内定取消しなどの対応(防止措置)をとる必要があります。

ただし、内定取消しが有効と認められるためには、法に基づいて行う犯罪事実確認とは別に、採用過程で性犯罪歴が無いことを書面等で確認したり、内定取消事由を予め明示すること等の事前の確認・対応が必要となります。
※ 事前に性犯罪歴を確認していれば、求職者が性犯罪歴を隠したり、虚偽の報告をしたことが発覚した場合、内定取消事由としての「重要な経歴の詐称」に該当するものと考えられます。(事前に確認していないと、性犯罪歴が発覚しただけでは内定取消しが認められない可能性があります。)

(2) 採用段階ごとに必要な作業のイメージ

① 募集
募集要項の採用条件に性犯罪歴がないこと等を明記しておくことが必要です。
② 選考
誓約書・履歴書等で性犯罪歴が無いことを明示的に確認することが必要です。
③ 内定
内定通知書等に「重要な経歴の詐称」を内定取消事由として明記しておくことが必要です。
④ 犯罪事実確認・防止措置
犯罪事実確認を実施したうえで、性犯罪歴がある場合、防止措置(内定取消等)を行います。

なお、雇用契約の始期以降に犯罪事実確認を行う場合も想定されるため、就業規則に試用期間の解約事由・懲戒事由として「重要な経歴の詐称」を定めておくことも重要です。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第9 性犯罪歴に関する情報の適正な管理

事業者は、犯罪事実確認に関する情報を適正に管理するための取組(情報管理措置)を実施する必要があります。

(1) 日ごろから取り組むこと

日ごろから取り組むべきこととしては、以下のようなことがあげられます。

  • 犯歴という非常に機微な情報について、適正に管理を行う。
  • 犯歴情報を適正に管理するためのルール(情報管理規程)を整える。
  • 犯歴情報を扱う者を必要最小限に限定する。
  • 新たに開発するシステムでのみ犯歴情報を扱う(別の記録・保存は極力控える)。
  • 犯歴情報を扱う情報端末のセキュリティ環境を整える。

(2) 情報漏えい等が起こった場合に取り組むこと

万が一、漏えいなどの重大な事態が発生した場合、国(こども家庭庁)に直ちに報告することが必要で、場合によっては個人情報保護委員会への報告も必要です。

なお、犯罪事実確認によって得た従事者の性犯歴を、みだりに他人に教えるなどした場合は、法に基づく刑事罰が科されるだけでなく、民事上の損害賠償請求の対象となり得ます。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律) こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁)

第10 安全確保措置(犯罪事実確認)についての詳細h;

第11 安全確保措置(防止措置)についての詳細

こども性暴力防止法には、以下のように規定されています。

法第6条、第20条第1項第4号イ及び第25条
(犯罪事実確認の結果等を踏まえて講ずべき措置)
第六条 学校設置者等は、第四条の規定による犯罪事実確認に係る者について、その犯罪事実確認の
結果、前条第一項の措置により把握した状況、同条第二項の児童等からの相談の内容その他の事情
を踏まえ、その者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときは、その者を教員
等としてその本来の業務に従事させないことその他の児童対象性暴力等を防止するために必要な
措置を講じなければならない

この安全確保措置(防止措置)について詳しく見ていきます。どのような場合に「おそれがある」と認められるのか、その判断プロセスはどのようなものか、そして「おそれがある」と判断された時にどのような対応を取ることが可能かについて述べていきます。

(1) 児童対象性暴力等が行われる「おそれがあると認めるとき」の解釈

おそれの内容とその考え方は以下のようになっています。

(ア)特定性犯罪事実該当者であった場合

事業者は、犯罪事実確認の結果その他の事情を踏まえて「おそれ」の有無を判断するところ、特定性犯罪の確認対象期間が、過去のエビデンスから性犯罪の再犯リスクが特定性犯罪の前科を有しない者と比べて高い期間として設定されているものであること等を踏まえると、 特定性犯罪事実該当者であるにもかかわらず「おそれがない」と判断し得るだけの「その他の事情」があることは想定しがたいです。このため、通常、事業者は、特定性犯罪事実該当者であったことをもって「おそれ」があると認めます。

(イ) 在籍する児童等やその保護者から、特定の対象業務従事者による児童対象性暴力等の被害の申出があった場合

在籍する児童等本人又はその保護者から、特定の対象業務従事者による児童対象性暴力等の被害の申告があった場合には、性暴力の被害が引き続き発生している可能性があることから、「おそれ」があると認めます(被害があったことを前提とするものではなく、必要な事実確認ができるまでの暫定的な対応)。

(ウ) 調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合

児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合は、被害児童等への更なる性暴力等や、他の児童等への被害拡大が生じ得ることから、「おそれ」があると認めます。

(エ) 調査等の結果、児童対象性暴力等には該当しないが不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合

不適切な行為は、当該行為そのものは性暴力等には該当しませんが、継続・発展することにより性暴力等につながり得る行為であるため、不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合は、「おそれ」があると認めます。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)|こども家庭庁 こども性暴力防止法施行ガイドライン)

(2) 「おそれ」の判断プロセス

判断プロセスの概要は以下のようになっています。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)|こども家庭庁 こども性暴力防止法施行ガイドライン)

(3) 児童対象性暴力が行われる「おそれ」に応じた防止措置の内容の概要

「おそれ」に応じた防止措置の内容の概要は以下のようになっています。

(ア)特定性犯罪事実該当者であった場合
原則、当該教員等を対象業務に従事させない。(例:新規採用の場合は内定取消し等、現職者(※)の場合は対象業務以外への配置転換等)

※現職者とは以下のようなものを指します。
・ 施行時現職者
・ 法の施行の際に、学校設置者等又は施設等運営者において対象業務以外の業務に従事していたが配置転換等により対象業務に従事することとなった者
・ 認定時現職者
・ 認定等の際に、認定事業者等において対象業務以外の業務に従事していたが配置転換等により対象業務に従事することとなった者

(イ) 在籍する児童等やその保護者から、特定の教員等による児童対象性暴力等の被害の申出があった場合

被害拡大防止のため、被害が疑われる児童等と加害が疑われる教員等の接触の回避を行う。
(例:一時的に対象業務から外し、自宅待機や別業務に従事させるなど)

(ウ) 調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合

原則、当該教員等を対象業務に従事させない。
(例:懲戒事由に該当する場合には、就業規則に沿った対応を行うとともに、防止措置として不十分である場合には、対象業務以外への配置転換等を講じるなど)

(エ) 調査等の結果、児童対象性暴力等には該当しないが不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合

・ 重大な不適切な行為である場合には、(ウ)に準じた対応を行う。
・ 初回かつ比較的軽微なものであるような場合は、まずは、当該行為を繰り返さないように指導や研修受講命令を行い、注意深くその後の経過観察を行うなど、段階的な対応を行うことも考えられるが、指導したにも関わらず、同様の行為を繰り返した場合には、(ウ)に準じてより厳格な対応を行うことが考えられる。

以下では、各項目ごとに詳しく解説していきます。

(4) 特定性犯罪該当者である場合の防止措置

まず、犯罪事実確認の結果、犯歴ありと判断された場合、それが経歴詐称に当たる場合と、経歴詐称に当たらない場合とで対応が分かれます。

① 経歴詐称に当たる場合
内定取消、試用期間中解雇、懲戒解雇

(経歴詐称にあたるとするためには、事前に次のような対応が必要となります。
・採用選考過程で特定性犯罪前科の有無を確認すること
・就業規則に懲戒事由や試用期間の解約事由として「重要な経歴の詐称」を定めた上で周知すること。そして内定通知書や誓約書に内定取消事由を記載した上で交付すること)

② 経歴詐称に当たらない場合
(ア) 対象業務以外の業務に従事させることを検討

<業務の一部変更でこどもと接さないようできる場合>
業務範囲や従事場所の見直し

<対象業務以外を行う職種がある場合>
配置転換(職種限定合意がある場合本人同意が必要)

<別の事業者に従事させられる場合>
出向(就業規則等の規定が必要)
転籍(本人の個別同意が必要)

(イ) 十分に検討したが他の選択肢なし
普通解雇(従事者が有効性を争う場合には最終的には司法判断がなされます)

⚫ 配置転換等の措置を講じることを十分に検討したが、解雇以外の選択肢が取り得ないという事情があったと認められる場合に、当該事情は普通解雇の有効性の判断に当たって重要な要素として考慮されうることとなります。
⚫ 最終的には司法の場において、個別の事案毎に具体的な事実関係に基づいて客観的合
理性・社会的相当性の観点から判断されます。


上記の措置を講じるまでに一定期間を要する場合、暫定的な対応として、自宅待機命令による自宅待機等により対象業務に従事させないことが必要です。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)|こども家庭庁 こども性暴力防止法施行ガイドライン)

(5) 在籍する児童等やその保護者から特定の対象業務従事者による児童対象性暴力等の被害の申出があった場合

在籍する児童等やその保護者から特定の対象業務従事者による児童対象性暴力等の被害の申出があった場合、当該従事者については、おそれがあるとの判断の下、児童等と当該従事者との接触の回避(一時的な自宅待機命令、対象業務以外の業務に従事させる等)を行うことが必要です。

緊急性が高く速やかな対応が求められる一方で、事実の有無や内容等についての事実確認を行う前の段階であり、確認の結果によっては、事実がない場合も考えられるため、労働者保護の観点からは、事実確認が未了であるにもかかわらず、事実があることを前提とした懲戒等の処分や、確定的な配置転換等の労働者の地位に変更を生じさせるような対応をとることはあってはなりません。

この点、自宅待機命令については、業務上の必要性がない場合や不当な動機・目的がある場合は無効となるとする裁判例がありますが、法に基づく防止措置を講じる義務が生じている以上、業務命令権の一環として、自宅待機命令を行うことは、一般に可能であると考えられます。

したがって、在籍する児童等やその保護者から児童対象性暴力等の被害の申出があった場合、事業者においては、必要な事実確認ができるまでの間の暫定的な措置として、被害が疑われる児童等と当該従事者との接触を防止するための対応を行った上で、速やかに事実確認を行い、確認結果に基づく適切な対応を行うことが必要です。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)|こども家庭庁 こども性暴力防止法施行ガイドライン)

(6) 調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合

調査等の結果、対象業務従事者が児童対象性暴力等を行ったと合理的に判断される場合は、当該従事者について、就業規則に沿った懲戒処分や対象業務以外の業務への配置転換等を講じるなど、原則、対象業務に従事させないことが必要です。

この場合において、懲戒処分については、児童対象性暴力等という非違行為を理由として行うことが想定されますが、その場合の留意点は次に示すとおりです。

判例においては、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の種類及び事由を定めておくことを要するとされています。また、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生じるためには、その内容について適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとされています。

このため、事業者は、児童対象性暴力等に該当する行為を行った場合を懲戒事由として就業規則に規定するとともに、従事者に対して周知しておく必要があります。就業規則に懲戒規定を設ける前にした行為に対して、遡って懲戒処分をすることはできません。

そして、教員等又は教育保育等従事者が児童対象性暴力等を行った場合、業務の性質に照らして許容されるものではなく、就業規則に懲戒事由として「児童対象性暴力等に該当する行為を行った場合」等が規定されている場合には、当該事由に基づく懲戒処分は有効なものとして行うことができると考えられます。

ただし、懲戒の対象となる従事者に対して弁明の機会を与えなかったことにより懲戒処分が無効と判断された事例があるなど、手続的な相当性を欠く場合には、社会通念上相当なものと認められず懲戒権の濫用となる可能性があります。

懲戒処分を行うに当たっては、特段の支障がない限り、本人に弁明の機会を与えるとともに、そのような手続を行うことについて、就業規則や労働協約において事前に明確化しておくことが必要と考えられます。

なお、加害者と疑われる者について、事案発生時の事実調査としてのヒアリングと、懲戒処分の適正手続としての弁明の機会の付与は、それぞれ目的が異なるため、事実調査としてのヒアリングを行えば、弁明の機会の付与が直ちに不要となるものではないことには留意する必要があります。

したがって、調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合に適切に防止措置を講じることができるよう、事業者においては、次の(一)及び(二)の対応を行うことが適当です。

(一) 懲戒事由として、就業規則に「こども性暴力防止法上の「児童対象性暴力等に該当する行為を行ったと認められる場合」「刑罰法規の各規定に違反する行為を行ったと認められる場合」「企業秩序を乱した場合」等を定め、従事者に対してあらかじめ周知・説明しておくこと
(二) 服務規律を定めた文書(就業規則等)において、児童対象性暴力の範囲や、教育、保育を提供する場において児童対象性暴力等を行うことは法の趣旨や規定に反する行為であり厳格な懲戒処分の対象になり得ることをあらかじめ周知・伝達すること

なお、就業規則に基づく懲戒処分を行うのみでは、防止措置として不十分である場合(対象業務に従事させないことまではできない場合)も、児童対象性暴力等に該当する行為を行ったと合理的に判断される者を対象業務に従事させることは認められないことから、配置転換等を行うことが必要です。

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)|こども家庭庁 こども性暴力防止法施行ガイドライン)

(7) 調査等の結果、児童対象性暴力等には該当しないが不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合

調査等の結果、対象業務従事者が不適切な行為を行ったと合理的に判断される場合は、当該不適切な行為が「ア 初回かつ比較的軽微な場合」及び「イ 重大な不適切な行為である場合」に分けて対応します。

ア 初回かつ比較的軽微な場合
不適切な行為が初回かつ比較的軽微なものであるような場合は、まずは、なぜそのような行為を行ったのか、背景の理由や考えについて尋ねた上で、当該行為を繰り返さないように指導や研修受講命令を行い、注意深くその後の経過観察を行う等、段階的な対応を行うことが考えられます。

イ 重大な不適切な行為である場合
重大な不適切な行為を行ったと合理的に判断される場合は、「③ 調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合」に準じた対応を行うことが必要となります。

「ア 初回かつ比較的軽微な場合」において、事業者が行った指導や研修受講命令に従わず、繰り返し同様の不適切な行為を行ったり、再発防止のための研修受講を拒否するような悪質な業務命令違反があったりする場合には、「③ 調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合」に準じたより厳格な対応を検討することが考えられます。

調査等の結果、不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合に適切に防止措置を講じることができるよう、事業者においては、次の(一)及び(二)の対応を行うことが適当です。

(一) 懲戒事由として、就業規則に「不適切な行為を行った場合」「企業秩序を乱した場合」、「正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかった場合」等を定め、従事者に対してあらかじめ周知・説明しておくこと

(二) 服務規律を定めた文書(就業規則等)において、不適切な行為の範囲や、重大な不適切な行為、不適切な行為を繰り返すこと、再発防止のための研修受講を拒否するような悪質な業務命令違反がある場合には、厳格な懲戒処分の対象になり得ることをあらかじめ周知・伝達すること

(引用元:こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)|こども家庭庁 こども性暴力防止法施行ガイドライン)



第12 動画解説

動画解説に興味がある方は、こちらをご視聴ください。

第14 補足:参考情報

1、今後、新しい情報が入れば、アップデートしたいと思っています。

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