助成金不正受給への対応 弁護士が解説

目次

第1 雇用関係助成金の不正受給について

1 雇用関係助成金の不正受給とは(定義)

雇用関係助成金とは、雇用保険被保険者(以下「被保険者」といいます。)、被保険者であった者及び被保険者になろうとする者に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定、職業能力の開発や向上を図るため、一定の要件を満たした事業主又は事業主団体(以下「事業主等」といいます。)に対して、必要な助成を行うものです。

「不正受給」とは、事業主等が偽りその他不正の行為(詐欺、脅迫、贈賄等刑法各本条に触れる行為のほか、刑法上犯罪を構成するに至らない場合であっても、故意に支給申請書に虚偽の記載を行い又は偽りの証明を行うことが該当します。ただし、支給申請書に事実に反する記載があった場合であっても、当該記載誤りが故意によらないものと認められる場合は不正の行為には該当しません。)により本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすることをいいます。

なお、事業主等の代表者のほか、事業主等の役員、従業員、代理人その他当該事業主等の支給申請、申請書類の作成に関わった者が、偽りその他不正の行為をした場合には、当該事業主等が不正の行為をしたものとみなされます。

また、「不正受給に関与」とは、社会保険労務士、代理人又は訓練を行う者が故意に偽りの届出、報告、証明等を行い事業主等が助成金の支給を受け、又は受けようとすることをいいます。

また、「不正受給に係る請求金」とは、①3(1)イ(イ)に基づき返還を求められた額、②不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3分(支給申請が行われた日が令和2年3月31日以前の場合は年5分)の割合で算定した延滞金、③当該返還を求めた額の2割に相当する額(当該額に対する延滞金が発生する場合はその額を含む。以下同じ)の合計額をいいます。

2 不正受給があった場合になされる対応

(1) 不正受給のあった助成金の取扱い

事業主等が助成金の不正受給を行った場合、管轄労働局長は当該不正受給に係る助成金については不支給決定又は支給決定取消を行い、既に支給した助成金については3(1)イ(イ)により返還を求められた額に加え、不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3分(支給申請が行われた日が令和2年3月31日以前の場合は年5分)の割合で算定した延滞金及び当該返還を求めた額の2割に相当する額の合計額の請求の手続きが行われます。

また、社会保険労務士、代理人又は訓練を行う者が不正受給に関与していた場合、管轄労働局長は3(2)により社会保険労務士、代理人又は訓練を行う者に対しても不正受給により返還を求めた額に加え、不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3分(支給申請が行われた日が令和2年3月31日以前の場合は年5分)の割合で算定した延滞金及び当該返還を求めた額の2割に相当する額の合計額の請求の手続きが行われます。

(2) 不支給措置

不正受給を行った事業主等に対しては、上記2(1)により不正受給に係る助成金について不支給とした日又は支給を取り消した日から起算して5年間(平成31年3月31日以前の支給申請である場合は3年間。以下「不支給措置期間」といいます。)助成金が支給されません。

また、不正受給を行った事業主等の役員等(事業主等が個人である場合はその者、法人である場合は役員、団体である場合は代表者、理事等をいい、役員名簿等に記載がある者。ただし、偽りその他不正行為に関与した者に限る。)が他の事業主等の役員等となっている場合(平成31年3月31日以前の支給申請である場合を除く)は、役員等となっている他の事業主等に対しても、同様に同期間助成金が支給されません。

なお、不支給措置期間を経過しても、不正受給に係る請求金及び3(1)イ(ニ)により返還を命じられた額が全額納付されていない場合は、時効が完成している場合を除き、当該額が全額納付される日まで不支給措置期間が延長されます。

(3) 事業主等への通知及び不服の申し出があった場合の対応

イ 事業主への通知
管轄労働局等は、上記2(1)により不正受給に係る助成金について不支給決定又は支給決定取消を行ったときは、当該不正受給を行った事業主等に対し、不支給決定通知書又は支給決定取消通知書によりその旨を通知するとともに、不支給措置期間通知書により不支給措置期間には当該事業主等に係る助成金を支給しないこと及び当該不支給措置期間に申請が行われた助成金を支給しないことが通知されます。

ロ 不服の申し出があった場合の対応
雇用関係助成金は支給申請者の申し込みに対する行政庁の承諾により成立する贈与契約であり、原則として民法が適用され、支給・不支給の決定、支給決定の取り消しについては、行政不服審査法上の不服申立ての対象とはなりませんが、不正受給による不支給決定又は支給決定取消に対し、事業主等から不服の申し出があった場合は、適宜再調査を行うなど、必要な対応が図られます。

(4) 関係機関への情報提供

2(1)により不正受給に係る助成金について不支給決定又は支給決定取消がなされた場合は、ハローワークシステムに登録した上で、当該不正受給を行った事業主等の名称、法人番号、適用事業所名、適用事業所番号、不正受給に関与した役員等名(役職、性別及び生年月日を含む。)、不正受給に係る助成金名及び不支給措置期間を、社会保険労務士又は代理人が不正受給に関与していた場合は、事務所の名称(法人等の場合は法人等名を含む。)、所在地、氏名及び不正の内容を、訓練を行う者が不正受給に関与していた場合は、訓練を行う者の名称(法人等の場合は法人等名を含む。)、所在地、氏名及び不正の内容が労働局内の助成金関係各部及び管下の公共職業安定所に情報提供されるとともに、共働支援システム上の「不正受給事業主等・役員一覧表」や「不正受給に関与した社会保険労務士、代理人又は訓練実施者一覧表」に記入されます。

(5) 不正受給事案の公表

個別の助成金について不正受給が次のいずれかに該当する場合は、管轄労働局長はロ及びハの定めるところにより公表がなされます。
ただし、社会保険労務士、代理人又は訓練を行う者が不正受給に関与した場合であって、事業主等が当該不正受給について関与していないことが明らかな場合は、事業主等については公表しないことができます。

(イ) 事業主等が不正受給を行った場合であって、次のいずれかに該当するとき
a 一の事業主等に対する、不正受給を理由とした支給決定取消額及び不正受給を理由とした不支給決定に係る支給申請額の合計額が100万円以上の場合であって、当該不正受給に係る額の返還を命じた日から起算して1か月以内に、不正受給に係る請求金が全額納付されないとき
b 不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大又は悪質であると認めるとき

(ロ) 社会保険労務士、代理人又は訓練を行う者が不正受給に関与したとき

イにより管轄労働局長が公表する事項は次のとおりとなります。

(イ) 事業主等が不正受給を行った場合
a 不正受給を行った事業主等の名称、代表者及び役員等(不正に関与した役員等に限る。)の氏名並びに事業概要
b 不正受給に係る事業所の名称及び所在地
c 不正受給に係る助成金の名称、不支給決定日又は支給を取り消した日、返還を命じた額及び返還状況
d 不正の行為の内容

(ロ) 社会保険労務士又は代理人が不正受給に関与した場合
a 不正受給に関与した社会保険労務士又は代理人の氏名、事務所の名称(法人等の場合は法人等名を含む。)及び所在地
b 不正受給に係る助成金の名称、不支給決定日又は支給を取り消した日、返還を命じた額及び返還状況
c 不正の行為の内容

(ハ) 訓練を行う者が不正受給に関与していた場合
a 不正受給に関与した訓練を行う者の名称(法人等の場合は法人等名及び代表者名を含む。)及び所在地
b 不正受給に係る助成金の名称、不支給決定日又は支給を取り消した日、返還を命じた額及び返還状況
c 不正の行為の内容

イにより管轄労働局長が公表する期間は次のとおりです。

(イ) 公表は、不支給決定又は支給決定取消を行った日から起算して5年が経過する日までの間行うものとする。ただし、当該期間を経過しても不正受給に係る請求金が全額納付されていない場合は、全額
納付したことを管轄労働局長が確認した日までの間公表するものとする。

(ロ) イ(イ)aに該当するものとして管轄労働局長がロ(イ)の事項を公表した場合であって、不正受給に係る請求金が全額納付された場合は、(イ)にかかわらず、当該全額納付されたことを管轄労働局長が確認した日以降においては、ロ(イ)a(事業概要を除く。)及びbの事項を取り消すことができる。

3 雇用関係助成金の返還等

(1) 返還

助成金の支給を受けた事業主等が次の(イ)から(ニ)までのいずれかに該当する場合は、管轄労働局長は当該事業主等に対して、当該(イ)から(ニ)までに掲げる額について返還することを命ずるとともに、当該事業主は当該額について返還する義務を負います。
(イ) 偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けた場合
当該事業主に支給した助成金の全部又は一部
(ロ) 助成金の支給すべき額を超えて助成金の支給を受けた場合
当該支給すべき額を超えて支払われた部分の額

助成金の支給を受けた事業主等がイ(イ)に該当する場合は、管轄労働局長は当該事業主等に対して、イ(イ)に基づき返還を求めた額に加え、不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3分(支給申請が行われた日が令和2年3月31日以前の場合は年5分)の割合で算定した延滞金及び当該返還を求めた額の2割に相当する額の合計額について納付することを命ずるとともに、当該事業主は当該合計額について支払う義務を負います。

(2) 連帯債務

連帯債務
社会保険労務士、代理人又は訓練を行う者が、不正受給に関与していた場合は、申請事業主等と連帯して、不正受給に係る請求金を支払う義務を負います。

連帯債務の承諾
社会保険労務士又は代理人は、「支給要件確認申立書」(様式第1号)にて、不正受給に関与していた場合は、不正受給に係る請求金の返還等に対して申請事業主等と連帯して債務を負うことを承諾する旨を記載します。

(3) 支給決定された助成金の返還

事業主等が、管轄労働局長に対し支給決定された助成金の返還を申し出たときは、管轄労働局長がこれを認めた場合に限り、返還を行うことができるものとされます。

管轄労働局長は、支給決定された助成金の返還を申し出た事業主等に対して、提出された支給申請書等の書類を返却しないことができます。

(4) 社会保険労士又は代理人が不正受給に関与していた場合の申請に係る取扱い等

社会保険労務士又は代理人が不正受給に関与していた場合は、不支給決定又は支給決定取消を行った日から起算して5年間(以下「不受理措置期間」といいます。)は雇用関係助成金に係る当該社会保険労務士が行う提出代行、事務代理に基づく申請又は当該代理人が行う申請が受理されず、不受理措置期間通知書によりその旨通知されます。また、不受理措置期間を経過しても、不正受給に係る請求金が納付されていない場合は、時効
が完成している場合を除き、不正受給に係る請求金が全額納付される日まで当該社会保険労務士が行う提出代行、事務代理に基づく申請又は当該代理人が行う申請が受理されません。
不正受給に関与していた社会保険労務士又は代理人であるか否かの確認は、共働支援システム上の「不正受給に関与した社会保険労務士、代理人又は訓練実施者一覧表」により可能です。

第2 【Q&A】よくある質問

1 雇用調整助成金とは何ですか。

雇用調整助成金とは、雇用安定事業の一つです。雇用安定事業とは、被保険者、被保険者であった者および被保険者となろうとする者に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るために、政府が行う事業です(雇用保険法62条)。雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労使協定に基づき、一時休業、職業訓練、雇用調整のための出向など雇用の安定を図るために必要な措置を講じた場合に、当該事業主に対して支給される助成金を指します。
その額は、中小企業については休業手当負担額・教育訓練賃金負担額・出向にかかる出向元負担額の3分の2、大企業については同負担額の2分の1等とされています。

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第3 動画解説

動画解説に興味がある方は、こちらをご視聴ください。

第5 補足:参考情報

1、今後、新しい情報が入れば、アップデートしたいと思っています。

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