熱中症対策が義務化!【5/20通達】2025年6月施行【刑事罰あり】。企業の対応は?

目次

【注目の法改正の5/20通達】<令和7年6月1日施行>

弁護士田村裕一郎です。

今回は、企業の熱中症対策の義務化について、5/20通達を踏まえて、記事を書きました。

結論としては、企業は、5/20通達を踏まえて、熱中症対策を2025年6月1日までに行うべき、です。

よりわかりやすい情報を取得したい方は、本記事のみならず、下記のYouTube動画も、ご視聴下さい。

法改正の内容

2025年6月1日から、企業の義務として、㋐熱中症報告体制の整備と周知義務、㋑熱中症症状悪化防止のための措置・手順の作成・周知義務が新たに設けられます。概要は、次のとおりです。

概要

1 事業者が熱中症による健康障害を防止するために講ずるべき体制整備と関係作業者への周知
事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者が当該作業に従事する他の者に熱中症が生じた疑いがあることを発見した場合にその旨を報告させる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。


2 事業者が熱中症による健康障害を防止するために講ずるべき措置の実施手順の作成と関係作業者への周知
事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体冷却、必要に応じての医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその手順を周知させなければならない。

(上記は、通達より引用)

これに関し、5/20通達が公表されました。

そこで、下記の資料を参考としつつ、企業は対応すべきです。

労働安全衛生規則については、官報に記載がありますので、参考にして下さい。

厚生労働省公表の資料は、こちらです。詳しいです。

(労働政策審議会での資料は、こちらです。)

なお、WBGTについての詳細は、こちらです。

❶誰が、義務を負うのか


結論としては、全ての事業者(規模・業種問わず)が義務を負います。そのため、企業は、自社にあてはまるのか、をチェックすべきです。

なお、留意点については、通達に次のように述べられています。

通達

建設現場にみられるような混在作業であって、同一の作業場で複数の事業者が作業を行う場合は、当該作業場に関わる元方事業者及び関係請負人の事業者のいずれにも措置義務が生ずるものであること。この場合の作業者に対する周知の方法として、各事業者が共同して1つの緊急連絡先を定め、これを作業者の見やすい場所に掲示することや、メールでの送付、文書の配布等が考えられること。
なお、上記のような複数事業者が混在して作業を行う状況において当該措置が行われていなかった場合には、元方事業者のみに違反が生ずる訳ではなく、当該作業場に関わる全ての事業者に同条違反が生ずるものであること。

YouTube動画をご視聴下さい。

❷いつ、どこで、義務を負うのか

改正労働安全衛生規則の条文では、

「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。」

「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない」

とされています。

上記の緑色箇所につき、通達では、次のように述べられています。

通達

ア 「熱中症」とは、高温多湿な環境下において、体内の水分や塩分(ナトリウム等)バランスが崩れる、体温の調整機能が破綻する等して、発症する障害の総称であること。

イ「暑熱な場所」とは、湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所をいい、必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨であること。
また、「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいうこと。

なお、非定常作業、臨時の作業等であっても上記の条件を満たすことが見込まれる場合は対象となること。

よって、企業としては、上記に該当するかチェックすべきです。

この点、判断方法について、通達では、次のように述べられています。

通達

暑熱な場所に該当するか否かは、原則として作業が行われる場所で湿球黒球温度又は気温を実測することにより判断する必要があるが、例えば、通風のよい屋外作業について、天気予報(スマートフォン等のアプリケーションによるものを含む。)、環境省の運営する熱中症予防情報サイト等の活用によって判断可能な場合には、これらを用いても差し支えないこと。

❸どのような内容の義務を負うのか


今回の改正で事業者が新たに負う義務は、次の2点です。

1.熱中症の報告体制の整備及び周知義務

2.熱中症の症状悪化防止の措置・手順の作成及び周知義務

これらの義務についての詳細は、次のとおりです。

㋐熱中症の報告体制の整備及び周知義務

改正労働安全衛生規則の条文では、

「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。」とされています。

この点につき、通達では、次のように述べられています。

通達

ア 「報告をさせる体制の整備」には、熱中症を生ずるおそれのある作業が行われる作業場の責任者等報告を受ける者の連絡先及び当該者への連絡方法を定め、かつ明示することにより、作業者が熱中症を生ずるおそれのある作業を行っている間、随時報告を受けることができる状態を保つことが含まれるものであること。また、作業者から電話等による報告を受けるだけでなく、積極的に熱中症が生じた疑いのある作業者を早期に発見する観点から推奨される方法として、責任者等による作業場所の巡視、2人以上の作業者が作業中に互いの健康状態を確認するバディ制の採用、ウェアラブルデバイスを用いた作業者の熱中症のリスク管理、責任者・労働者双方向での定期連絡やこれらの措置の組合せなどが挙げられること。ただし、ウェアラブルデバイスによる管理については、必ずしも当該機器を着用した者の状態を正確に把握することができるわけではないため、他の方法と組み合わせる等により、リスク管理の精度を高めることが望ましいこと。


イ 「報告をさせる体制の整備」は「熱中症を生ずるおそれのある作業」が行われることが想定される作業日の作業開始前までに行っておく必要があるが、夏季の屋外作業のように、一定期間、暑熱環境下で作業を行うことが明らかな場合は、十分な余裕をもって体制を整え、当該作業に従事することが見込まれる者に周知しておくよう努めること。
なお、当該作業が、同一の従事者によって一定期間に連続して行われることが想定され、既に体制の整備及びその周知が講じられている場合には、当該措置を作業日ごとに重ねて実施する必要はないこと。


ウ 「周知」は、報告先等が作業者に確実に伝わることが必要である。その方法には、事業場の見やすい箇所への掲示、メールの送付、文書の配布のほか、朝礼における伝達等口頭によることがあり、原則いずれでも差し支えないが、伝達内容が複雑である場合など口頭だけでは確実に伝わることが担保されない場合や、朝礼に参加しない者がいる場合なども想定されるため、必要に応じて、複数の手段を組み合わせて行うこと。なお、熱中症の症状が疑われる場合の報告先については、必要に応じて、別添1(掲示例)を参考にされたいこと。また、現場で周知した結果の記録の保存までは法令では求めていないが、労働基準監督署による確認に際しては、事業者として適切に対応することが求められること。

なお、上記赤文字について、通達では次の記載があります。そのため、企業としては、フリーランスのような立場の者に対しても、留意すべきです。

通達

当該作業に従事する者」(以下「作業者」という。)とは、労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者を含むものであること。

㋑熱中症の症状悪化防止の措置・手順の作成及び周知義務

改正労働安全衛生規則の条文では、

「事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない

とされています。

この点につき、通達では、次のように述べられています。

通達

ウ 「身体の冷却」としては、作業着を脱がせて水をかけること、アイスバスに入れること、十分に涼しい休憩所に避難させること、ミストファンを当てること等の被災者を体外から冷却する措置のほか、アイススラリー(流動性の氷状飲料)を摂取させる等の被災者を体内から冷却する措置が挙げられること。この間、容態が急変する場合があることから、熱中症を生じたおそれがある作業者を一人きりにすることなく、他の作業者等が見守ることが重要であること。


エ 「熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順等」は熱中症の重篤化を防止する観点から、事業場の体制や作業実態を踏まえて合理的に実施可能な内容とする必要があること。
手順等の作成に当たっては、必要に応じて、別添2(手順例)を参考にされたいが、必ずしもこれらによらず、作業場所及び作業内容の実態を踏まえて、事業場独自の手順等を定めて差し支えないこと。


なお、別添2の手順例①は、令和3年4月20日付け基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」により従前から示しているものであり、同手順例②は新たに示すものであるが、判断に迷う場合には、放置したり、措置を躊躇して先送りにせず、#7119等を活用するなど専門機関や医療機関に相談し、速やかに専門家の指示を仰ぐことが望ましいこと。


オ 「熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順」等については、あらかじめ、事業場における緊急連絡網、搬送先となる医療機関の連絡先(当該医療機関の所在地を含む。)を定めた場合には、これらも含めて手順例等に記載することが望ましいこと。


カ 熱中症については、帰宅後も含め、時間が経ってから症状が悪化することがある。このため、事業場における回復の判断は慎重に行うことが重要である。回復後の体調急変等により症状が悪化する場合は、直ちに医療機関を受診する必要があるため、その旨を回復後の作業者に十分理解させるとともに、体調急変時の連絡体制や対応(具合が悪くなったら本人や家族が救急搬送を要請する、事業者側から様子を伺うための連絡を取る等)を、事業場の実態を踏まえて、あらかじめ定めておくことが重要であること。

なお、上記赤文字について、通達では次の記載があります。そのため、企業としては、フリーランスのような立場の者に対しても、留意すべきです。

通達

当該作業に従事する者」(以下「作業者」という。)とは、労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者を含むものであること。

企業はどうすべきか。

詳細については、YouTube動画をご視聴ください。

動画解説

本記事に関連する動画解説を希望される方は、下記YouTubeをご視聴下さい。

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