フリーランス保護法への企業の対応➋ハラスメント対策の体制整備(メルマガ2024年8月号)

目次

指針の要約

指針の概要としては、

、 特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる法第 14 条第1項各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ること(以下「業務委託におけるハラスメント」という。)のないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない(法第 14 条第1項)。

、特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者が法第 14 条第1項の相談を行ったこと又は特定業務委託事業者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その者(その者が法第2条第1項第2号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に対し、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない(同条第2項)。

です。

概要❶業務委託におけるハラスメントとは

1、 業務委託におけるパワーハラスメント
➡取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること、をいいます。

2、業務委託におけるセクシュアルハラスメント
➡性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が法第2条第1項第2号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害することをいいます。

3、業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメント
➡特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害することをいいます(指針の定義です。ただ、個人的には、この定義は、正確ではないのではないか、と考えています)。

概要➋業務委託におけるパワーハラスメント

、業務委託におけるパワーハラスメントは、業務委託に関して行われる①取引上の優越的な関係を背景とした言動であって、②業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③特定受託業務従事者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう、とされています。

なお、客観的にみて、業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示及び通常の取引行為としての交渉の範囲内の話合いについては、業務委託におけるパワーハラスメントには該当しない、とされています。

、具体例は、次のとおりです。すなわち、業務委託におけるパワーハラスメントの状況は多様ですが、代表的な言動の類型としては以下のイからヘまでのものがあり、当該言動の類型ごとに、典型的に業務委託におけるパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例としては、次のようなものがあります。

ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、次の例は限定列挙ではないことに十分留意することが必要です。なお、業務委託におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる以下の例については、行為者と当該言動を受ける特定受託業務従事者の関係性を個別に記載していませんが、取引上の優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です。

イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
(該当すると考えられる例)
① 殴打・足蹴りを行うこと。
② 相手に物を投げつけること。
(該当しないと考えられる例)
① 誤ってぶつかること。
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言・執拗な嫌がらせ)
(該当すると考えられる例)
① 人格を否定するような言動を行うこと(相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。)。
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
③ 他の労働者や事業者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の関係者宛てに送信すること。
⑤ 契約内容に基づき成果物を納品したにもかかわらず正当な理由なく報酬を支払わないこと又は減額することを、度を超して繰り返し示唆する又は威圧的に迫ること。
(該当しないと考えられる例)
① 業務委託に係る契約に定める内容が適切に実施されず、再三注意してもそれが改善されない特定受託業務従事者に対して一定程度強く注意をすること。
② 業務委託に係る契約の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った特定受託業務従事者に対して、一定程度強く注意をすること。
③ 事業者間の通常の取引行為の一環として、取引条件の変更について協議を行うこと。
ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(該当すると考えられる例)
① 一人の特定受託業務従事者に対して、特定業務委託事業者の雇用する労働者が集団で無視をし、事業所で孤立させること。
(該当しないと考えられる例)
① 通常、他の特定受託事業者と同じ場所で業務を遂行する特定受託業務従事者に対し、業務委託に係る契約を適切に遂行できるよう短期間集中的に別室で当該業務委託の内容に関する研修等を実施すること。
ニ 過大な要求(業務委託に係る契約上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(該当すると考えられる例)
① 業務委託に係る契約上予定されていない肉体的・精神的負荷の高い作業を強要すること。
② 特定受託業務従事者に業務委託に係る業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
③ 明確な検収基準を示さずに嫌がらせのために特定受託事業者の給付の受領を何度も拒み、やり直しを強要すること。
(該当しないと考えられる例)
① 業務の繁忙期に、業務委託に係る契約の範囲内で、通常時よりも一定程度多い業務の処理を行わせること。
② 検収基準を明らかにして指示しているにもかかわらず、当該基準に達しない給付を行う特定受託業務従事者に対し、当該基準に達しない部分を示してやり直しを指示すること。
ホ 過小な要求(合理的な理由なく契約内容とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(該当すると考えられる例)
① 気に入らない特定受託業務従事者に対して嫌がらせのために業務委託に係る契約上予定されていた業務や役割を与えないこと。
(該当しないと考えられる例)
① 当初予定していた成果物の発注数が減少したため、業務委託に係る契約の範囲内で、特定受託業務従事者に依頼する業務量を減らすこと。
ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
(該当すると考えられる例)
① 特定受託業務従事者を事業所外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
② 特定受託業務従事者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該特定受託業務従事者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
(該当しないと考えられる例)
① 特定受託業務従事者への育児介護等の配慮を目的として、特定受託業務従事者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
② 特定受託業務従事者の了解を得て、当該特定受託業務従事者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で業務委託に係る契約を遂行する上で関係する者に伝達し、配慮を促すこと。


なお、プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講ずることが必要である。

概要❸業務委託におけるセクシュアルハラスメント

、業務委託におけるセクシュアルハラスメントには、業務委託に関して行われる性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応により当該特定受託業務従事者がその業務委託の条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)があります。

なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものです。また、被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する業務委託におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものです。

、「対価型セクシュアルハラスメント」とは、業務委託に関して行われる特定受託業務従事者の意に反する性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応により、当該特定受託業務従事者が契約の解除、報酬の減額、取引数量の削減、取引の停止等の不利益を受けることであって、その状況は多様ですが、典型的な例として、次のようなものがあります。


イ 特定業務委託事業者が特定受託業務従事者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該特定受託業務従事者との契約を解除すること。


ロ 特定業務委託事業者の雇用する労働者が事業所内において日頃から特定受託業務従事者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該特定受託業務従事者の報酬を減額すること。

、「環境型セクシュアルハラスメント」とは、業務委託に関して行われる特定受託業務従事者の意に反する性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、その状況は多様ですが、典型的な例として、次のようなものがあります。


イ 就業場所において特定業務委託事業者の雇用する労働者が特定受託業務従事者の腰、胸等に度々触ったため、当該特定受託業務従事者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。


ロ 元委託事業者の雇用する労働者が当該元委託事業者の事業所において就業する特定受託業務従事者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該特定受託業務従事者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと

概要❹業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメント

、業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントとは、特定業務委託事業者等から行われる以下のものがあります。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントには該当しない、とされています。


特定受託業務従事者が、①妊娠したこと、②出産したこと、③妊娠又は出産に起因する症状により業務委託に係る業務を行えないこと若しくは行えなかったこと又は当該業務の能率が低下したこと(以下「妊娠したこと等」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「状態への嫌がらせ型」という。)


特定受託業務従事者が、妊娠又は出産に関して法第 13 条第1項若しくは第2項の規定による配慮の申出(以下「配慮の申出」という。)をしたこと又はこれらの規定による配慮を受けたこと(以下「配慮を受けたこと」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「配慮申出等への嫌がらせ型」という。)

、「状態への嫌がらせ型」の典型的な例として、次に掲げるものがあるが、これらは限定列挙ではないことに留意が必要です。
(典型的な例)
イ 妊娠したこと等のみを理由として嫌がらせ等をするもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当します。特定受託業務従事者が妊娠したこと等により、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動又は契約に定められた業務に従事させないことをいう。以下同じ。)をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者等に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。

妊娠したこと等のみを理由として契約の解除その他の不利益な取扱いを示唆するもの特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、妊娠したこと等のみを理由として、業務委託に係る契約の解除、報酬の減額、取引数量の削減、取引の停止等の不利益な取扱いを示唆すること。
例えば、妊娠を報告しただけで、業務委託に係る契約の解除を示唆したり、報酬の減額を示唆したりすることは不利益な取扱いの示唆に該当しますが、一方で、妊娠又は出産に起因する症状により役務の提供を休止した場合に、実際に役務の提供を休止した分の報酬の減額について話合いをすることはハラスメントには該当しないです。

、「配慮申出等への嫌がらせ型」の典型的な例として、次に掲げるものがあるが、これらは限定列挙ではないことに留意が必要です。


(典型的な例)
イ 配慮の申出を阻害するもの
客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の配慮の申出が阻害されるものが該当します。


特定受託業務従事者が配慮の申出をしたい旨を業務委託に係る契約担当者に相談したとろ、当該申出をしないよう言うこと。
特定受託業務従事者が配慮の申出をしたところ、業務委託に係る契約担当者が、当該特定受託業務従事者に対し、当該申出を取り下げるよう言うこと。
特定受託業務従事者が配慮の申出をしたい旨を特定業務委託事業者の雇用する労働者に伝えたところ、繰り返し又は継続的に申出をしないよう言うこと(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。
特定受託業務従事者が配慮の申出をしたところ、特定業務委託事業者の雇用する労働者が、繰り返し又は継続的に当該申出を取り下げるよう言うこと(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。


ロ 配慮を受けたことにより嫌がらせ等をするもの
客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当します。
特定受託業務従事者が配慮を受けたことにより、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者又はその雇用する労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。


ハ 配慮の申出等のみを理由として契約の解除その他の不利益な取扱いを示唆するもの
特定受託業務従事者が、配慮の申出をしたい旨を特定業務委託事業者に相談したこと、配慮の申出をしたこと、配慮を受けたことのみを理由として、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、業務委託に係る契約の解除、報酬の減額、取引数量の削減、取引の停止等の不利益な取扱いを示唆すること。


例えば、配慮を受けても業務量が変わらないにもかかわらず、報酬の減額を示唆することや、実際に業務量が減少した分以上の報酬を減額することを示唆することは、不利益な取扱いの示唆に該当しますが、一方で、配慮を受けたことにより実際に業務量が減少した分の報酬の減額について話合いをすることはハラスメントには該当しないです。

概要❺体制整備⑴ 特定業務委託事業者の方針等の明確化
及びその周知・啓発

、特定業務委託事業者は、業務委託におけるハラスメントに対する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、イ及びロの措置を講じなければなりません。

業務委託におけるハラスメントの内容及び業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、業務委託に係る契約担当者・事業担当者、成果物の確認・検収を行う者、特定受託業務従事者と協力して業務を行う者を含め、労働者に周知・啓発すること。

(特定業務委託事業者の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、業務委託におけるハラスメントの内容を労働者に周知・啓発すること。
② 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に業務委託におけるハラスメントの内容及び業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針について記載し、配布等すること。
③ 業務委託におけるハラスメントの内容及び業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。

業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、業務委託に係る契約担当者・事業担当者、成果物の確認・検収を行う者、特定受託業務従事者と協力して業務を行う者を含め、労働者に周知・啓発すること。

(対処方針を定め、労働者に周知・啓発していると認められる例)
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
② 業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。

概要❻体制整備⑵ 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、
適切に対応するために必要な体制の整備

特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、イ及びロの措置を講じなければならない。


相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、特定受託業務従事者に周知すること(新たに業務委託におけるハラスメントの専用の窓口を定める場合に加えて、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和 47 年法律第 113 号)第11 条第1項から第3項までに規定する職場におけるセクシュアルハラスメント、同法第 11 条の3第1項及び第2項に規定する職場における妊娠、出産等に関するハラスメント又は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)
第 30 条の2第1項及び第2項に規定する職場におけるパワーハラスメントに係る相談窓口を業務委託におけるハラスメントについても活用可能とする場合も含む。)。

(相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)
① 外部の機関に相談への対応を委託すること。
② 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
③ 相談に対応するための制度を設けること。
なお、専用アプリやメール等の対面以外の方法により相談を受け付ける場合には、相談を行った特定受託業務従事者にとって、当該相談が受け付けられたことを確実に認識できる仕組みとすることが必要である。
(相談窓口を特定受託業務従事者に周知していると認められる例)
① 業務委託契約に係る書面やメール等に業務委託におけるハラスメントの相談窓口の連絡先を記載すること。
② 特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等において業務委託におけるハラスメントの相談窓口について掲載すること。


イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた特定受託業務従事者(以下「被害者」という。)が萎縮するなどして相談を躊 躇する例もあること等を踏まえ、業務委託におけるハラスメントが現実に生じている場合だけではなく、その発生のおそれがある場合や、業務委託におけるハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合等が考えられる。

(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)
① 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門や契約担当部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
② 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
③ 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

概要❼体制整備⑶ 業務委託におけるハラスメントに係る
事後の迅速かつ適切な対応

、特定業務委託事業者は、業務委託におけるハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、イからニまでの措置を講じなければならない。

事案に係る事実関係を迅速かつ正確に把握すること。
なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントについては、性的な言動の行為者とされる者が、他の事業者等である場合には、必要に応じて、他の事業者等に事実関係の確認への協力を求めることも含まれる。

(事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)
① 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談を行った特定受託業務従事者(以下「相談者」という。)及び業務委託におけるハラスメントに係る言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)の双方から事実関係を確認すること。
また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。事実関係の確認の状況について、共有することが適切な場合には、伝達可能な範囲で相談者に共有すること。
② 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。

イにより、業務委託におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。

(措置を適正に行っていると認められる例)
① 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための被害者の就業場所の変更又は行為者の配置転換、行為者の謝罪、被害者の取引条件上の不利益の回復、事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
② 中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。

イにより、業務委託におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。

(措置を適正に行っていると認められる例)
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における業務委託におけるハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための被害者の就業場所の変更又は行為者の配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。
② 中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること

改めて業務委託におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
また、業務委託におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントについては、性的な言動の行為者とされる者が他の事業者等である場合には、必要に応じて、他の事業者等に再発防止に向けた措置への協力を求めることも含まれる。

(再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)
① 業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針及び業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ、特定受託業務従事者が閲覧するイントラネット等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
② 業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントについて、法第 13 条の配慮の申出ができる旨を、社内報、パンフレット、社内ホームページ、特定受託業務従事者が閲覧するイントラネット等広報又は啓発のための資料に改めて掲載し、配布等すること。
③ 特定業務委託事業者の雇用する労働者に対して業務委託におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

概要❽体制整備⑷ 併せて講ずべき措置

⑴から⑶までの措置を講ずるに際しては、併せてイ及びロの措置を講じなければならない。


業務委託におけるハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該ハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者及び特定受託業務従事者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。

(相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていると認められる例)
① 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、特定受託業務従事者に対する業務委託に係る契約の内容を記した書面やメール等(以下「業務委託契約に係る書面やメール等」という。)において記載すること、特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等において掲載すること、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
② 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。
③ 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。

法第 14 条第2項及び第 17 条第1項の規定を踏まえ、特定受託業務従事者が業務委託におけるハラスメントに関する相談をしたこと又は事実関係の確認等の特定業務委託事業者の講ずべき措置に協力したこと、厚生労働大臣(都道府県労働局)に対して申出をし、適当な措置をとるべきことを求めたこと(以下「業務委託におけるハラスメントの相談等」という。)を理由として、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、特定受託業務従事者に周知・啓発すること。

(不利益な取扱いをされない旨を定め、特定受託業務従事者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)
① 業務委託契約に係る書面やメール等において、業務委託におけるハラスメントの相談等を理由として、特定受託業務従事者が契約の解除等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、特定受託業務従事者に周知・啓発をすること。
② 特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等に業務委託におけるハラスメントの相談等を理由として、特定受託業務従事者が契約の解除等の不利益な取扱いをされない旨を掲載すること。


参考資料

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